近年、多くのブランドが自らの製品をより広い顧客層にアピールするために、価格を抑えたアイテム(例えば化粧品やサングラス・小型ハンドバッグ等)を積極的に提供しています。
その結果、高級ブランドであっても、年間約3000ドル以下で購入する層が売上の大部分を占めるようになりました。
最近の急激な価格引き上げは、こうした消費者を疎外することになり、売上に悪影響を及ぼす可能性があります。実際にグッチ・フェラガモ・シャネル・LVMH等のメーカーは昨対比で売り上げを落としています。
また、高級ブランドが一般的に手の届く存在になったことで、ブランド品を所有する特別感が薄れる問題も浮上しています。
同様に、自動車業界の例としてポルシェを挙げることができます。ポルシェは元々スポーツカーメーカーとして知られており、一部の特定の層にしか手の届かない存在でした。しかし最近では、大衆向けのSUVもラインナップに加えるなどして売上を大幅に伸ばしましたが、その一方でかつての特別感は失われつつあります。フェラーリやランボルギーニのような高級スポーツカーと比べると、ポルシェのSUVはメルセデスやBMWの同カテゴリー車と競合し、価格に敏感な消費者からは批判の声が上がっています。
要するに、高価格を受け入れることができる一部の消費者ではなく、価格に敏感な消費者から選別されることで、近年の売上減少が招かれているのではないかと考えられます。ブランドが顧客の中で特別感を保つためには、慎重な価格戦略とブランド価値の維持が重要であると言えそうです。