
前回の記事では、高級時計や宝飾品を単なる「モノ」ではなく、「資産」として見る考え方についてお話ししました。
では、そもそも「資産価値があるモノ」とは、どのようなモノなのでしょうか。
価格が高ければ、すべて資産になるのでしょうか。
実は、「高価なモノ」と「資産として価値のあるモノ」は、必ずしも同じではありません。
1,000万円で買ったから、1,000万円の資産とは限らない
例えば、1,000万円で購入したモノがあったとします。
購入した本人にとっては、間違いなく1,000万円を支払った大切な所有物です。
しかし、それを今日売却しようとしたときに100万円でしか売れないのであれば、「現在1,000万円の資産を持っている」と考えることはできません。
反対に、数年前に300万円で購入した時計が、現在500万円で取引されていることもあります。
つまり、資産として考えるうえで重要なのは、
「いくらで買ったか」ではなく、「いま市場でどのように評価されるか」
ということです。
資産価値を考える3つの視点
私たちが高級時計や宝飾品を「資産」として考える場合、大きく3つの視点があります。
① 現在価値
まずは、その品物が現在の市場でどのくらいの価値を持っているか。
ブランド、モデル、希少性、状態、付属品、市場相場、為替などによって評価は変わります。
これは株式でいえば「現在の株価」に近い考え方です。
② 流動性
次に重要なのが、
「必要なときに、どのくらい早くお金へ換えられるか」
です。
例えば、同じ1,000万円の評価が付く資産でも、不動産と高級時計では性質が違います。
不動産は非常に価値の高い資産ですが、売却には買い手探しや契約、登記など一定の時間が必要になります。
一方、世界的に流通している高級時計の中には、比較的短時間で評価し、資金化できるものがあります。
資産価値を見るときには、金額だけではなく、
「どの程度の時間で現金へ換えられるのか」
も重要なのです。
③ 担保力
そしてもう一つが、
「売却しなくても、その価値を利用できるか」
という視点です。
ここは、質屋がモノを見るときの特徴的な考え方でもあります。
例えば、市場価値の高い時計を所有している場合、それを売却すれば当然現金になります。
しかし売ってしまえば、その時計は自分のものではなくなります。
質預かりであれば、その時計を担保として預けることで、所有権を手放すことなく一定の資金を調達できます。
つまり、
モノの価値を「売却価格」だけではなく「資金調達力」として見る
という考え方です。
「資産がある」と「現金がある」は違う
会社を経営している方や不動産を所有している方なら、この感覚は理解しやすいかもしれません。
十分な資産を持っていても、手元の現金が常に潤沢とは限りません。
不動産、株式、高級時計、宝飾品など、さまざまな形で資産を所有している一方で、急にまとまった資金が必要になることがあります。
例えば、
納税資金が必要になった。
事業上、一時的に資金が必要になった。
魅力的な投資機会が突然現れた。
不動産取引の決済まで、短期間だけ資金が必要になった。
こうした場面で、保有資産の価値と流動性を把握していれば、選択肢は増えます。
「現金が足りないから資産を売る」という一択ではなく、
「どの資産を、どのような方法で活用するか」
と考えられるようになるからです。
高級時計は「身につけられる資産」でもある
高級時計には、少し特殊な性質があります。
日常的に身につけて楽しむことができ、それでいて一定のモデルについては世界中に中古市場が存在しています。
つまり、
使うことができる。
所有する満足感がある。
価値を確認できる。
売却できる。
担保として資金化できる。
こうした複数の性質を、一つのモノが持っています。
もちろん、すべての高級時計が値上がりするわけではありません。
購入価格を大きく下回るものもありますし、市場環境によって価格は変動します。
だからこそ、「高級時計だから資産」と一括りにするのではなく、その時計が現在どの程度の市場価値と流動性を持っているのかを知ることが重要になります。
モノの価値を定期的に確認するという習慣
証券会社の口座には、保有株式の現在価値が表示されます。
銀行口座を見れば、預金残高が分かります。
しかし、高級時計や宝飾品については、自分から確認しない限り現在価値は分かりません。
例えば、
「5年前に買ったロレックスはいくらになっているのか」
「父から譲り受けた時計にはどの程度の価値があるのか」
「所有する時計5本を合計すると、どのくらいの資産になるのか」
こうしたことを定期的に確認してみる。
すると、それまで「コレクション」だったものが、「自分が保有する資産の一部」として見えてきます。
質屋を「資産の健康診断」に使う
病院で定期的に健康診断を受けるように、保有するモノについても時々価値を確認する。
私たちは、そんな質屋の使い方がもっとあってもよいと考えています。
売る必要はありません。
借りる必要もありません。
まず、
「これは、いまどのくらいの価値があるのか」
を知る。
そして必要になったとき、
「売却する」
「そのまま持ち続ける」
「担保として一時的に資金へ換える」
という選択肢の中から、自分に合った方法を選ぶ。
モノを資産として考える第一歩は、買うことでも売ることでもありません。
自分が持っているモノの「現在価値」を知ることから始まります。